矯正中に虫歯になったらどうなる?

「矯正治療中に虫歯になったらどうするの?」
「矯正治療中に虫歯になる理由やリスクを知りたい」
「矯正治療中に虫歯にならないためには?」
ビジネスマンであれば見た目の清潔さは非常に重要。
くわえて、歯は健康寿命を支えているともいわれており、自己投資としてはコスパが高いともいえるでしょう。
そこで本記事では、矯正中の虫歯について、網羅的に解説していきます。
虫歯や歯の痛み、歯ぐきの腫れを治したいと思っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
矯正治療の概要

矯正治療は、不正咬合や歯並びの問題を解決するために行われます。
主な方法として、金属やセラミックのワイヤーを用いた従来型のブラケット矯正と、透明で取り外し可能なマウスピース型の矯正装置があります。
従来型矯正は、しっかりと固定されるため、複雑な歯並びの調整に有効ですが、見た目の問題や口内での違和感、維持の難しさが欠点です。
一方、マウスピース型矯正は、その目立たない見た目と取り外しの容易さで人気が高まっていますが、治療の成功は装着時間の厳守に大きく依存します。
両方の矯正治療に共通していえるのは、定期的なメンテナンスと口内衛生の徹底が必須であること。
無視すると虫歯や歯周病のリスクが高まるため、注意が必要です。
矯正治療中に虫歯になりやすい理由
矯正治療中は、ブラケットやワイヤーといった矯正器具の装着によって、歯の表面や器具の周囲が適切にブラッシングされにくい状態となります。
食べ物の残りかすやプラークが器具によって隠され、通常の歯磨きでは落としきれないことで、虫歯の原因菌が増殖しやすい環境を作り出してしまいます。
くわえて、フロスの使用が難しくなるために歯間の清掃が不十分になりがちであり、これも虫歯リスクを高める一因です。
したがって、矯正治療中はとくに丁寧なオーラルケアが求められます。
歯科医師や歯科衛生士の指導に従って、専用のクリーニングツールを使うなど、適切な歯磨き方法を実践することが非常に重要です。
矯正治療中に虫歯になりやすい理由
矯正治療中は、虫歯ができやすくなると言われることがあります。
それでは、なぜ矯正中に虫歯のリスクが高まるのでしょうか?
その理由は、大きく以下の5つに分けることができます。
- 磨き残しが増えやすくなるから
- 唾液の作用が低下するから
- 矯正装置に汚れが溜まりやすいから
- 治療の期間が長期に及ぶから
- 自己流のケアに頼ってしまうから
磨き残しが増えやすくなるから
矯正治療中は、歯と矯正装置の間に食べ物の残りかすやプラークが溜まりやすくなり、通常の歯磨きだけでは十分に取り除けません。
特にブラケットやワイヤーの周りは清掃が難しく、歯ブラシやフロスが届きにくいため、磨き残しが増えてしまいます。
その結果、細菌が繁殖しやすく、虫歯のリスクが高まります。
また、矯正装置を装着していると歯の表面に圧力がかかり、歯質が弱くなることもあります。
このため、矯正治療中は特に丁寧で徹底的なオーラルケアが求められるのです。
唾液の作用が低下するから
矯正治療中は、矯正装置の影響で口の中の環境が変化し、唾液の流れが妨げられることがあります。
唾液には、口内の酸を中和し、虫歯の原因菌を抑制する大切な役割があります。
しかし、装置によって頬や舌の動きが制限されると、この自然な洗浄作用が十分に働かなくなってしまうのです。
さらに、口呼吸が増えることで口腔内が乾燥し、唾液の分泌量が減少する傾向も見られます。
その結果、歯の再石灰化が進みにくくなり、虫歯のリスクが高まるのです。
矯正中は、意識的に水分補給を行い、口腔を乾燥させない工夫を取り入れることが重要です。
矯正装置に汚れが溜まりやすいから
矯正装置はブラケットやワイヤーに凹凸が多く、食べかすやプラークが引っかかりやすくなります。
装置の縁やワイヤー下は歯ブラシが届きにくく、磨き残しが増えることで酸が産生され、エナメル質が脱灰しやすくなります。
結果として白斑(ホワイトスポット)が生じやすく、虫歯へ進行しやすくなるため、矯正中は徹底した清掃が欠かせません。
治療の期間が長期に及ぶから
矯正治療は月単位から年単位に及ぶため、装置を付けている期間が長いほどプラークが付着しやすい日数が積み重なり、虫歯のリスクが高まりやすくなります。
通院間隔のあいだにセルフケアが緩むと白斑が生じやすく、甘味摂取の習慣化も悪影響を与えます。
長期の矯正中こそ、毎日の丁寧な清掃とフッ化物の活用、定期的なチェックで口腔環境を良好に保つことが大切です。
必要に応じて歯間ブラシやタフトブラシを使い、矯正中の虫歯を予防します。
自己流のケアに頼ってしまうから
矯正治療中は装置の構造が複雑なため、日常のブラッシングやケア方法に工夫が求められます。
しかし、自己流で磨き方を続けてしまうと、どうしても清掃が行き届かない部分が出てしまいます。
特にブラケットの周囲や歯間は汚れが溜まりやすく、歯科医師の指導なしでは適切なケアが難しいのが実情です。
矯正中は、定期的に専門家からブラッシング指導を受け、自分に合った清掃器具を選ぶことで、虫歯リスクを最小限に抑えられます。
矯正治療中に虫歯になったらどうする?
ここからは、いよいよ矯正治療中に虫歯になったらどうするのかについて解説していきます。
といっても、先述した通り、矯正治療には以下の2つの種類があります。
- ワイヤー型
- マウスピース型
両者で差異があるので、それぞれ確認してください。
ワイヤー型
ワイヤー矯正の最中に虫歯になると、その治療にはいくつか特別な配慮が必要です。
小規模であればワイヤーを外すことなく治療を進めることが可能ですが、虫歯が大きい場合や矯正装置の下にある時には、虫歯にアクセスするために一時的にワイヤーを取り外すことが求められます。
ワイヤーを外した後、虫歯を適切に治療し、その後で矯正治療を再開するのが一般的です。
しかし、このプロセスは矯正計画の進行に影響を与える可能性があるため、矯正治療中はとくに細心のオーラルケアが重要で、虫歯の予防が何より優先されます。
定期的な歯科検診で早期発見し、専門家のアドバイスに従うことが、健康な歯を維持し、矯正治療をスムーズに進めるために不可欠です。
マウスピース型
マウスピース矯正は取り外し可能なため、虫歯の治療が必要になっても比較的容易に対処ができる点がメリットです。
治療が必要な箇所に歯科医師が直接アクセスできるので、矯正治療を中断することなく虫歯の処置が可能です。
しかし、大幅な虫歯治療によって歯の形が変わると、マウスピースがフィットしなくなることがあります。
そのような場合は、治療後の歯の形に合わせて新しいマウスピースを作製することになるため、予定していた矯正計画に変更が生じる可能性があるでしょう。
矯正治療期間中はとくに丁寧なオーラルケアと定期的な歯科検診が推奨されます。
矯正前に虫歯が見つかった場合の対応
矯正治療を安全かつ効果的に進めるためには、事前に虫歯の有無を確認することが欠かせません。
もし検査の段階で虫歯が見つかった場合には、矯正よりも先に虫歯治療を行うのが一般的です。
虫歯を抱えたまま矯正治療を始めてしまうと、装置の影響で虫歯が進行しやすくなり、最悪の場合には歯を失うリスクもあるためです。
ただし、軽度の場合は矯正治療と並行して経過観察を行うケースもあります。
矯正前に虫歯を治療するか、それとも並行して進めるかは、虫歯の状態によって異なります。
担当の歯科医師と相談し、状況に応じた治療計画を立てるようにしましょう。
矯正前の虫歯治療の流れ
矯正治療を始める前に虫歯を治療する際は、まず虫歯に侵された部分を丁寧に除去します。
軽度の虫歯であれば、コンポジットレジン(樹脂)を詰めて処置を終えることが多いです。
一方、虫歯が深い場合には歯型を取って詰め物や被せ物を作製し、装着して治療を完了します。
さらに、進行が進んで神経まで達している場合には、根管治療と呼ばれる精密な治療が必要になることもあります。
これらの工程により、矯正治療の開始時期が後ろ倒しになる可能性があるため、余裕を持ったスケジュール管理が大切です。
矯正治療中に虫歯になることのリスク
矯正治療中は歯と歯の間や矯正装置の周りに食べかすが溜まりやすく、これが虫歯のリスクを高める原因となります。
仮に矯正治療中に虫歯が発生してしまった場合、虫歯の進行状況に応じてワイヤーやブラケットを一時的に取り外すなどして治療を行う必要があるため、治療期間の延長が避けられなくなります。
さらに、虫歯による追加的な治療は予定外の費用がかかるため、経済的な負担も大きくなる可能性も。
そのため、矯正治療中は、定期検診を怠らず、念入りなオーラルケアを心掛け、虫歯を未然に防ぐことが非常に重要です。
関連記事:虫歯の種類・ステージを紹介
虫歯があっても矯正治療は始められる?
矯正治療を開始する前には、口内の健康状態を整えることが重要です。
虫歯がある場合には、その治療を最優先で行うことが求められます。
虫歯を放置したまま矯正治療を進めると、矯正装置が適切に機能せず、治療の効果が低下したり、虫歯が悪化したりしてしまうリスクが高まります。
さらに、虫歯の存在は、矯正治療中の口内衛生管理を複雑にし、予期せぬ合併症を引き起こす原因にもなるため、安全で健全な矯正治療のためには、まず虫歯の処置が絶対に必要です。
関連記事:虫歯は自然治癒で治せる?自然治癒を促進する方法も紹介
矯正治療中に虫歯にならないために

矯正治療中に虫歯にならないための予防法を解説します。
主な方法は以下の7つです。
- 医師の指示に従う
- 歯ブラシは「矯正用」を選ぶ
- 正しいブラッシングを心がける
- フッ素入りの歯磨き粉を使用する
- ワンタフトブラシや歯間ブラシを使用する
- マウスピースの洗浄を行う
- 食生活に注意する
医師の指示に従う
矯正治療を行っている最中に虫歯を防ぐためには、指示に従うことがとても大切です。
矯正装置を装着していると、通常の歯磨きでは清掃しにくい部分ができることがあります。
そのため、歯科医師や矯正歯科医師が推奨する特別なブラッシングテクニックや歯間ブラシ、フロスの使用方法を学び、日々のオーラルケアに取り入れましょう。
また、指定された期間ごとに歯科医院を訪れて、プロのクリーニングを受けることで、残りがちなプラークや歯石を除去し、虫歯のリスクを減らせます。
定期的な検診を欠かさず、プロフェッショナルなケアと自宅での細かなお手入れのバランスを取ることが、虫歯を避けるうえで非常に重要であることを覚えておいてください。
歯ブラシは「矯正用」を選ぶ
矯正治療中は、通常の歯ブラシでは装置の細部まで届かず、磨き残しが発生しやすくなります。
そのため、歯並びや装置の形状に合わせて設計された「矯正用歯ブラシ」を使用することが重要です。
矯正用歯ブラシは、ブラケットやワイヤーの下にも毛先が入りやすく、プラークを効果的に除去できます。
加えて、歯間ブラシやタフトブラシを併用することで、歯と装置の隙間に残る汚れも取り除けます。
矯正中の虫歯を防ぐためには、歯ブラシの選び方と使い分けを意識することが欠かせません。
正しいブラッシングを心がける
矯正治療中は歯ブラシの毛が装置に干渉されやすく、歯と歯の間など、矯正装置の周りの綺麗にしにくい箇所が虫歯の温床になりがちです。
正しいブラッシングの技術を身につけることが、虫歯予防の鍵となります。
具体的には、歯科医師から指導されるブラッシング方法を実践し、小刻みに丁寧に各ブラケットやワイヤーの周りをブラッシングすることが大切です。
矯正治療中は通常よりも時間をかけて、各歯を個別に丁寧に磨きましょう。
定期的な歯科診察で専門家によるクリーニングとフィードバックを受けることで、ブラッシング技術を改善してください。
フッ素入りの歯磨き粉を使用する
矯正治療中は脱灰が起こりやすいため、フッ素入り歯磨き粉の継続使用が有効です。
フッ素は再石灰化を助け、酸に強い層を形成して白斑の発生を抑えます。
1,000〜1,500ppm程度を目安に、就寝前にも使い、少量の水で一度だけうがいをして成分を口内に残すよう心がけてください。
ブラケット周囲は虫歯になりやすいため、歯間ブラシやタフトブラシで清掃後、歯面全体に行き渡るよう仕上げ磨きを行います。
ワンタフトブラシや歯間ブラシを使用する
矯正治療中はブラケットやワイヤーの周りに汚れが残りやすく、通常の歯ブラシだけでは十分に磨けません。
そのため、補助清掃用具としてワンタフトブラシや歯間ブラシを取り入れることが効果的です。
ワンタフトブラシは毛先が細く、ブラケットやワイヤーの隙間、歯と歯ぐきの境目などをピンポイントで磨けます。
一方、歯間ブラシは歯と歯の間に詰まったプラークや食べかすを取り除くのに役立ちます。
これらを併用することで、磨き残しを減らし、矯正中の虫歯リスクを大幅に抑えられます。
マウスピースの洗浄を行う
マウスピースは唾液やプラークが付着しやすく、清掃不足は虫歯リスクを高めます。
毎食後に外して流水で洗い、柔らかいブラシで優しくこすります。
研磨剤入り歯磨き粉や高温の湯は傷や変形の原因になるため避けてください。
1日1回は専用洗浄剤で浸け置きを行い、十分にすすいでから清潔なケースで保管します。
装着前は必ず歯を磨き、再付着を防ぐようにしましょう。
食生活に注意する
矯正治療中の食生活にはとくに注意が必要です。
加工糖分の多い食品や柔らかく粘着質のあるお菓子は虫歯のリスクを高めます。
これらの食品は矯正装置に付着しやすく、取り除くのも困難で、虫歯菌の餌となりやすいのです。
治療中はこうした食べ物を控えめにし、糖分の摂取を最小限に抑えることが望ましいでしょう。
また、硬い食品や粘りがある食品も矯正装置に悪影響を及ぼしがちです。
フルーツや野菜は健康に良いですが、矯正装置を傷つけないように、生をそのまま噛む代わりに小さく切ったり、蒸したりして柔らかくするなど工夫が重要です。
そして、食後は毎回、丁寧に歯磨きをすることが欠かせません。
水で口をゆすぎ、歯間ブラシやフロスを用いて装置の周りの食べかすとプラークを徹底的に取り除くように心がけてください。
正しく維持された食生活と口腔衛生は、矯正治療を成功に導くための重要な要素です。
関連記事:【習慣・食生活別】虫歯の予防方法
矯正と虫歯に関連するよくある質問
ここまで矯正治療中に虫歯になる理由やリスク、矯正治療中に虫歯にならない方法などについて解説してきました。
最後に矯正と虫歯に関連するよくある質問に回答していきます。
矯正中に虫歯になったら、矯正装置は全部外す必要がありますか?
矯正中に虫歯ができた場合でも、必ずしも矯正装置をすべて外す必要はありません。
虫歯の位置や進行度によって対応が異なります。
たとえば、小さな虫歯であれば装置をつけたまま治療を行うことが可能です。
しかし、虫歯が矯正装置の下にできていたり、進行が深かったりする場合には、治療のために一時的にワイヤーやブラケットを外す必要が生じることもあります。
歯科医師が状況を確認し、矯正と虫歯治療の両立ができる最適な方法を判断してくれます。
虫歯があっても矯正治療の相談はできますか?
虫歯がある状態でも、矯正治療の相談は可能です。
カウンセリングでは、歯並びや噛み合わせの状態を確認するとともに、虫歯や歯周病の有無をチェックします。
もし虫歯が見つかった場合は、矯正を始める前に治療を優先するのが一般的です。
ただし、軽度の虫歯であれば、進行状況を見ながら矯正治療と並行して管理することも可能です。
矯正を検討している場合は、まず歯科医師に相談し、治療の順序や最適なタイミングを決めることが大切です。
そもそも虫歯が多いので相談するのが恥ずかしいです
虫歯が多くて相談しづらいと感じる方でも、遠慮せず受診頂けます。
初診では虫歯の本数や進行度を確認させて頂き、必要な治療と矯正開始の順序を一緒に決めます。
プライバシーに配慮し、痛みや費用の不安にも丁寧に説明します。
まずは現状を把握することで、虫歯の悪化を防ぎ、安心して治療を進められます。
矯正中の虫歯は虫歯治療を優先するのが一般的
矯正治療中に虫歯が発生した場合、虫歯を優先して治療することが一般的です。
矯正装置は虫歯治療の邪魔をしないように、必要に応じて部分的に取り外しながら、虫歯の部分に適切な処置を行います。
また、矯正中は虫歯が起こりやすい期間のため、入念なブラッシングを心がけましょう。
コラム監修者
資格
- 医療法人社団世航会 理事長・歯学博士
- ICOI 国際インプラント学会 指導医
- UCLAインプラントアソシエーション理事
- JAID 常任理事
- 日本顎咬合学会 認定医
- 日本口腔インプラント学会所属
- 日本補綴歯科学会所属
- 日本歯科医師会 会員
- 東京都歯科医師会 会員
- 厚生労働省認定研修医指導医
略歴
- 1997年 明海大学 歯学部入学
- 2003年 同大学 卒業
- 2003年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 顎口腔機能再構築学系 摂食機能保存学講座 摂食機能保存学分野 博士課程 入学
- 2006年 顎咬合学会 特別新人賞
- 2007年 同大学院 修了 歯学博士所得
- 2007年 東京医科歯科大学 歯学部附属病院 医員
- 2007年 世田谷デンタルオフィス 開院
- 2008年 医療法人社団世航会 設立
- 2013年 明海大学歯学部 保存治療学分野 非常勤助教
- 2014年 明海大学歯学部 保存治療学分野 客員講師
- 2015年 昭和大学歯学部 歯科矯正学分野 兼任講師
- 2016年 明海大学歯学部 補綴学講座 客員講師
- 2020年 日本大学医学部 大学院医学総合研究科生理系 入学
- 2025年 同大学院 修了 医学博士取得
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