虫歯で頭痛が起きる5つの原因と今すぐ実践できる対処法について

虫歯による頭痛に悩んでいる方に向けて、頭痛が引き起こされる原因や対処法についてご紹介します。
虫歯ができている状態で「頭痛がする」と感じられたら、虫歯だけではないトラブルが起きているのかもしれません。歯が原因で起きる頭痛には、緊急の対処が必要となるものもあります。
そこで今回の記事では、虫歯で頭痛が起こる原因やメカニズム、対処法について解説します。参考にしていただければ、ご自身の虫歯や頭痛に対してどのように対処すれば良いか、ご理解いただけるはずです。
頭痛を引き起こす歯のトラブルとそのメカニズム

頭痛を引き起こす歯のトラブルは虫歯だけではありません。なぜ頭痛が引き起こされるのか、メカニズムについて見ていきましょう。
トラブル1:歯髄炎
まず「歯髄炎」で頭痛が引き起こされる場合、根本的な原因は虫歯です。虫歯が歯の中心にある歯髄まで達してしまった場合、歯髄炎と診断されます。歯髄炎では炎症が起き、悪化すると頭痛を感じることが少なくありません。
歯髄炎による痛みは非常に強く、歯全体はもちろん、頭まで届いてしまうことがあります。
トラブル2:歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)
「歯性上顎洞炎」では、上顎のあたりにある「上顎洞」と呼ばれる部分に虫歯の症状が現れます。歯の根幹が炎症を起こす疾患ですが、副鼻腔炎を発症させるなど顔から頭全体へと症状が及びます。
そのため歯性上顎洞炎になると頭が重く感じたり、痛みを感じたりすることあるでしょう。
トラブル3:筋緊張性頭痛
「筋緊張性頭痛」は虫歯によって起こる噛み合わせのズレによって引き起こされる頭痛です。虫歯ができて噛み合わせが悪くなると、顎の筋肉が均等に使われず片側が緊張した状態になります。
さらに片方だけで咀嚼していると、歯がすり減ってさらに噛み合わせがズレてきます。噛み合わせの不調が続くと頭にまで不調が及び、頭痛が引き起こされるのが原因です。
トラブル4:脳静脈血栓症
虫歯による頭痛の中には、「脳静脈血栓症」により引き起こされるものもあります。脳静脈血栓症とは虫歯菌が血液に乗って、脳の静脈にまで達してしまったときに発症される病気です。
脳に到達した虫歯菌は炎症を引き起こし、脳で血栓を作り出すこともあります。
虫歯による頭痛で脳静脈血栓症が起こることは多くありません。しかしもし起きた場合、緊急の対処が必要となります。
血栓により脳に被害が及ぶ前に、歯科クリニックを受診してください。
トラブル5:脳炎
虫歯で頭痛が起きる原因として最後に考えられるのは、「脳炎」です。
脳炎とは脳の中に白血球が入り込み、炎症が起きることで引き起こされます。虫歯が原因で発症することは多くありませんが、可能性は否定できません。
脳炎では意識障害や麻痺などの症状も現れることがあり、日常生活が困難になります。
虫歯による頭痛とその他の深刻な症状が現れた場合、すぐに歯科クリニックに相談しましょう。
歯のトラブルを原因とした頭痛への対処法

それでは虫歯などが原因となる頭痛には、どのように対処するべきか見ていきましょう。
次の方法を参考にして、ご自身にとって適切な対処を行ってください。
対処法1:すみやかにクリニックを受診する(虫歯の治療を行う)
最も大切となるのは、すみやかに歯科クリニックを受診することです。虫歯が原因で頭痛が発生している場合、虫歯治療にて症状の改善が見込めます。
頭痛を引き起こすほどの虫歯は、かなり進行している段階です。
できる限り早めに歯科クリニックを受診して、治療を勧めてください。
関連記事:歯医者の初診料はどのくらい?治療費の相場とともに解説
対処法2:嚙み合わせの治療を進める
噛み合わせの治療を受けることも対処法のひとつです。噛み合わせのバランスの崩れが起きると、筋肉の緊張や関節の不調により頭痛が起きることがあります。
しかし噛み合わせを改善すれば、頭痛も解消されるでしょう。
治療では歯列矯正を行ったり、義歯を装着したりする処置が行われます。まずは歯科クリニックを受診して、噛み合わせのチェックを受けることから始めましょう。
関連記事:歯列矯正にかかる費用はどのくらい?安くするポイントも紹介
対処法3:患部を冷やす
すぐに歯科クリニックを受診できない場合、患部を冷やせば痛みが和らぐことがあります。
氷や保冷剤をタオルで包んで、痛みを感じる歯の部分に当ててください。頭痛がひどいようなら、同じように頭にも当てます。
患部を冷やすと血流が抑えられ、痛みを感じにくくなります。冷やしすぎないように気をつけながら患部に当ててください。
関連記事:虫歯で歯が痛いときは冷やしてもよい?効果的な冷やし方とは
対処法4:鎮痛剤を飲む
痛みが強い場合は、鎮痛剤を飲むのも効果的な方法です。
歯科クリニックから処方されたものでも、市販のものでもどちらでも構いません。
ロキソニンやバファリンなどを、用法に従って服用しましょう。
鎮痛剤を服用すれば、強い痛みは治まるはずです。鎮痛剤で痛みを和らげながら、歯科クリニックを受診できるようになるまで耐えてください。
対処法5:血行促進・体温を上昇させる行動を控える
虫歯による頭痛の痛みを悪化させないためには、体温を上昇させる行動を控えることも大切です。たとえば入浴や運動、飲酒などがあげられます。
入浴・運動・飲酒は血流を改善させます。体温の上昇や血流の改善は痛みが強くなる原因になり得るため、できる限り避けたいものです。
関連記事:歯が痛いときの応急処置方法とやってはいけない行動について
虫歯による頭痛を悪化させないための対策
初期の虫歯は再石灰化で改善することがありますが、穴があいた虫歯は自然には治りません。以下では虫歯による頭痛を悪化させないための対策の3つ紹介します。
正しいブラッシングを行う
虫歯による頭痛を悪化させないためには、毎日のブラッシングを丁寧に行うことが大切です。痛みがある箇所を避けて磨くと、細菌が残り炎症が進行するおそれがあります。力を入れすぎず、柔らかめの歯ブラシで歯と歯茎の境目を優しく磨きましょう。
歯間ブラシやデンタルフロスを併用することで、虫歯菌の温床となる歯垢をしっかり取り除けます。歯科医師や歯科衛生士の指導を受けて正しいブラッシング方法を身につけることが、虫歯の悪化と口腔の炎症悪化や歯痛の再発予防につながります。
長時間食べ物を口の中に入れない
虫歯による頭痛を悪化させないためには、食べ物を長時間口の中に入れたままにしないことが大切です。食事中に食べ物を口にため込むと、虫歯菌が糖分を分解して酸を作り出し、歯のエナメル質を溶かすリスクが高まります。
その状態が続くと虫歯が進行し、炎症による痛みや頭痛が強くなるおそれがあります。よく噛んで食べ、飲み込むまでの時間を意識することがポイントです。
間食をだらだら続ける習慣も控え、口内環境を清潔に保つことで虫歯予防につながります。
定期健診を受ける
虫歯による頭痛を悪化させないためには、定期健診を受けて早期に虫歯や歯茎の炎症を見つけることが大切です。歯科医院ではクリーニングで歯垢・歯石を除去し、噛み合わせのチェックや知覚過敏のケアも行います。
初期の虫歯を治療できれば炎症による痛みの拡大を抑え、歯性上顎洞炎などの合併症予防に役立つ可能性があります。頭痛が続く場合は我慢せず、症状が出たら早めに相談してください。
来院前に準備しておきたいこと
虫歯による頭痛はつらいものです。来院前にはしっかりと症状を伝えられるよう、以下の準備をしておくとスムーズに事が運ぶでしょう。
頭痛や痛みの経緯を記録する重要性
虫歯による頭痛で歯科医院を受診する際は、痛みの経緯を記録しておくことが診断の助けになります。頭痛が出始めた時期や痛みの強さ、天候や食事との関係、痛む部位などをメモしておくと、原因を特定しやすくなります。
得に断続的な痛みや夜間に強まる場合は、歯髄炎や噛み合わせの不調が関係していることもあります。来院前に痛みの特徴を整理することで、より適切な治療方針を立ててもらいやすくなります。
虫歯の進行度を判断する簡単なセルフチェック
来院前に虫歯の進行度を簡単に把握するため、次の5つのポイントを確認するとよいでしょう。
- 冷たい物や甘味でしみる症状が続く
- 夜間にズキズキと拍動する痛みが強まる
- 噛むと痛みや違和感が出る
- 黒い穴や欠けを指で触れて分かる
- 歯茎が腫れて膿や口臭が強くなる
複数当てはまるほど、虫歯進行の可能性が高まります。結果は日時とともに記録し、受診時に伝えることで頭痛の原因特定と治療方針の決定がスムーズになります。
初診時に歯科医に伝えるべき症状のリスト
虫歯による頭痛で初めて歯科を受診する際は、痛みの経過や生活状況をできるだけ具体的に伝えることが重要です。例えば以下の内容を参考に伝える症状のリストをまとめておくとよいでしょう。
- 痛みが出る時間帯
- 冷たい物・温かい物での反応
- 噛んだときの違和感
- 頭のどの部位に痛みが出るか
- 鎮痛剤を使用したか
- 頭痛の頻度
- 他の持病や服薬の有無
これらの情報を正確に伝えることで、虫歯が原因の頭痛かどうかを早期に判断でき、適切な治療方針を立てやすくなります。
虫歯による頭痛の治療法
虫歯による頭痛を悪化させないための対策や来院までにしておきたい準備を紹介してきました。では実際に歯科医院ではどのような治療が行われるのでしょうか。
ここからは、具体的な治療法を2つ解説していきます。なお実際には医師の診察を経て治療が行われますので、医師に相談のうえ治療方針は決めましょう。
治療法①虫歯の治療を行う
虫歯が原因の頭痛を根本から和らげるには、虫歯そのものの治療を優先します。虫歯が初期の場合はフッ化物応用や経過観察で再石灰化を促し、ある程度の進行が見られる場合には虫歯部を除去してコンポジットレジンで充填します。仮に神経まで達した場合は根管治療で炎症を抑え、必要に応じて被せ物で強度を回復します。
痛み止めでごまかすと進行を見逃すため、症状が続くときは早めに受診します。
治療法②嚙み合わせの治療を行う
虫歯が原因で噛み合わせのバランスが崩れると、顎周囲の筋肉が緊張して頭痛を引き起こすことがあります。そのため、噛み合わせの治療を行うことが根本的な改善につながるのです。
軽度であれば詰め物や被せ物の調整で解消できますが、ズレが大きい場合は歯列矯正や夜間用のマウスピースの検討が行われます。正しい噛み合わせに整えることで、顎やこめかみの筋肉の負担が減り、頭痛の再発を防止できます。
虫歯治療が頭痛改善につながる理由
虫歯による頭痛を改善するには、原因となる歯や神経への負担を取り除くことが重要です。歯科治療によって炎症や圧迫を解消することで、頭痛の軽減や再発防止につながります。
ここでは、虫歯治療がどのように頭痛を和らげるのか、その具体的な理由を詳しく見ていきましょう。
歯科治療による神経圧迫の緩和
虫歯による頭痛は、歯の神経や周囲組織が炎症を起こし、三叉神経を介した痛みの伝達・感作で頭部に痛みが広がる場合があります。歯科治療によって虫歯の原因となる感染や炎症を取り除くと、神経への圧迫が軽減され、痛みや頭の重だるさが和らぎます。
特に根管治療(歯の神経を清掃・除去する治療)は、内部の炎症を鎮めるうえで効果的です。早期に治療を受けることで、慢性的な頭痛への進行を防ぎ、快適な日常生活を取り戻せます。
正しい噛み合わせの調整がもたらす全身的な効果
虫歯によって噛み合わせが乱れると、片側の顎やこめかみの筋肉に負担がかかり、筋緊張性頭痛を引き起こすことがあります。歯科治療で詰め物や被せ物の高さを調整し、左右の噛み合わせを整えると、顎関節や首まわりの筋肉の緊張が和らぎます。
正しい噛み合わせは、頭痛の再発防止だけでなく、姿勢の安定や全身のバランス維持にも効果的です。
歯科治療による血流と神経機能の正常化
虫歯が進行すると、歯や顎周辺の炎症によって血流が滞り、神経の働きが鈍くなることがあります。歯科治療で炎症を取り除くことで、血液の循環が改善され、酸素や栄養が神経細胞に届きやすくなります。
これにより神経伝達が正常化し、痛みの信号が過剰に伝わることを防ぐことが可能です。血流と神経機能のバランスが整うことで、頭部の重さや鈍痛が軽減し、自然な回復力が高まります。
虫歯をそのままにしておくとどうなるのか?

頭痛を感じるような虫歯に対処せず、そのままにしておくと次のような症状が現れてきます。
【症状】
- 痛みが強くなる
- 治療期間が長引く
- 歯を失う
- 顎や顔に腫れが現れる
- 口臭が強くなる
- 副鼻腔炎を発症する
- 骨髄炎が引き起こされる
- 心筋梗塞や脳梗塞が引き起こされる
- 敗血症になる
虫歯をそのまま放置しておくと、心筋梗塞や脳梗塞など、命に関わる事態に発展しかねません。できる限り早めに歯科クリニックを受診してください。
関連記事:虫歯を放置するリスクとは?治療期間や費用もチェック
虫歯による頭痛に関するよくある質問
最後に、虫歯による頭痛に関するよくある質問を2つ紹介します。
虫歯で歯は痛くないのに頭痛が起きることはある?
虫歯が原因であっても、必ずしも歯が痛むとは限りません。初期段階では神経まで炎症が達しておらず、痛みを感じにくい状態でも炎症や感染が広がり、周囲の神経や筋肉に影響を与えることがあります。
その結果、三叉神経を介して頭部に痛みが伝わり、歯は痛くないのに頭痛を感じることがあります。原因を特定するためには、歯科クリニックでレントゲンや神経の状態を確認してもらうことが大切です。
後頭部の頭痛は虫歯が関係している?
虫歯が原因で後頭部に頭痛が出ることもあります。特に奥歯の虫歯が進行すると、顎の筋肉や首まわりの筋肉に負担がかかり、筋緊張性頭痛として後頭部に痛みが広がることがあります。
また、噛み合わせのズレや歯ぎしりによって首の血流が悪化し、頭の後ろ側に鈍痛が出るケースも見られます。歯の痛みがなくても、慢性的な後頭部の頭痛が続く場合は、歯科検診で噛み合わせや虫歯の有無を確認することが大切です。
ただ、そのほかにも原因は考えられるため、歯科と並行して病院での診察も受けるとよいでしょう。
虫歯は頭痛以上の重篤な症状を引き起こすことも
いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、虫歯による頭痛についてご理解いただけたと思います。虫歯はひどい頭痛だけでなく、命に関わる症状を引き起こすこともあるものです。早めに治療を開始しましょう。
世航会デンタルオフィスでは虫歯治療はもちろん、口腔外科や根管治療にも対応しています。そのためさまざまな虫歯の症例を治療可能です。
また予防歯科にも力を入れているため、これからの虫歯を防ぎたいと思われている方もぜひご相談ください。
コラム監修者
資格
- 医療法人社団世航会 理事長・歯学博士
- ICOI 国際インプラント学会 指導医
- UCLAインプラントアソシエーション理事
- JAID 常任理事
- 日本顎咬合学会 認定医
- 日本口腔インプラント学会所属
- 日本補綴歯科学会所属
- 日本歯科医師会 会員
- 東京都歯科医師会 会員
- 厚生労働省認定研修医指導医
略歴
- 1997年 明海大学 歯学部入学
- 2003年 同大学 卒業
- 2003年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 顎口腔機能再構築学系 摂食機能保存学講座 摂食機能保存学分野 博士課程 入学
- 2006年 顎咬合学会 特別新人賞
- 2007年 同大学院 修了 歯学博士所得
- 2007年 東京医科歯科大学 歯学部附属病院 医員
- 2007年 世田谷デンタルオフィス 開院
- 2008年 医療法人社団世航会 設立
- 2013年 明海大学歯学部 保存治療学分野 非常勤助教
- 2014年 明海大学歯学部 保存治療学分野 客員講師
- 2015年 昭和大学歯学部 歯科矯正学分野 兼任講師
- 2016年 明海大学歯学部 補綴学講座 客員講師
- 2020年 日本大学医学部 大学院医学総合研究科生理系 入学
- 2025年 同大学院 修了 医学博士取得
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