矯正中に虫歯ができたらどうする?予防方法も紹介

「矯正中は虫歯になりやすい?」
「矯正と虫歯は同時に治療できる?」
「矯正中に虫歯になった場合どうなるの?」
歯の病気は全身疾患とも密接な関係があるため、異常が見られた際は早期対応が必要です。
そこで本記事では、矯正中の虫歯に関する冒頭の疑問について、詳しく解説していきます。
虫歯や歯の痛み、歯ぐきの腫れを治したいと思っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
矯正中は虫歯になりやすいのか
矯正治療中は、器具が装着されていることで歯磨きがいつも以上に困難になるため、虫歯になりやすい傾向があります。
具体的には、矯正器具と歯の間に食べかすが残ってしまったり、歯間ブラシなどがうまく使えなくなったりするなど。
矯正中はとくに歯の清掃に注意が必要で、定期的な歯科検診や歯磨き指導を受けることが重要です。
適切な清掃と予防ケアを心がけ、虫歯の予防に努めましょう。
矯正中に虫歯になりやすい原因
矯正中に虫歯になる主な原因は以下の3点です。
【虫歯の原因】
- 歯を磨きにくくなるため
- 唾液がうまく循環しなくなるため
- 矯正器具に汚れが溜まりやすくなるため
各原因について詳しく解説します。
原因①歯を磨きにくくなるため
矯正治療を受けると、歯を磨きにくくなります。
歯の表面に矯正用の装置を取り付けるためです。
磨き残しが生じると虫歯のリスクが高まります。
ただし、影響の程度は矯正治療の方法によって異なります。代表的な矯正治療の方法は以下のとおりです。
種類 | 概要 |
ブラケットワイヤー矯正 | 歯に取り付けたブラケット(小さな装置)をワイヤーで連結して圧力をかける方法。歯の表面にブラケットを付ける表側矯正と歯の裏面にブラケットを付ける裏側矯正にわかれる |
マウスピース矯正 | 透明のマウスピースを装着して圧力をかける方法。マウスピースは自分で取り外せる |
歯磨きに与える影響は、ブラケットワイヤー矯正のほうが大きいといえるでしょう。
歯の表面に小さな装置を取り付けるうえ、自分では取り外せないためです。
マウスピース矯正も、影響がないわけではありません。
歯の表面にアタッチメント(小さな装置)を取り付けると歯を磨きにくくなり、磨き残しが生じやすくなります。
原因②唾液がうまく循環しなくなるため
矯正装置を付けて口の中で唾液が循環しにくくなることも、虫歯ができやすくなる原因です。
唾液には、次の働きなどがあります。
【唾液の働き】
- 細菌や汚れを洗い流す
- 細菌の繁殖を防ぐ
- 口のなかのpHバランスを調整する
- エナメル質(歯の表面)の再石灰化を促す
唾液が循環しにくくなると、これらの働きが妨げられて虫歯のリスクが高まります。
歯列全体を覆うマウスピース矯正は、特に影響を受けやすいといえるでしょう。
原因③矯正器具に汚れが溜まりやすくなるため
ブラケットやアタッチメントを装着すると歯の表面に凹凸が生じます。
ここに汚れが溜まりやすいことも、虫歯のリスクが高まる原因です。
マウスピースを汚れたまま装着することや歯を磨かずに装着することも原因になりえます。
マウスピース矯正は比較的虫歯を防ぎやすい方法ですが、お手入れを怠るとリスクが高まります。
矯正と虫歯は同時に治療できる?
矯正と虫歯治療は同時に行うことができます。
同時進行であれば、歯並びを動かしながら虫歯治療ができるため、歯を削る量が少なく済み、健康的な治療が可能です。
虫歯治療中は一時的に矯正器具を外す必要がありますが、同日に両方の治療を予約しておけば、虫歯治療をすぐに済ませ、その後すぐに矯正器具を再装着できます。
これにより、矯正治療期間の延長の心配もありません。
矯正と虫歯治療を同時に進めることで、効率的かつ健康的な治療を実現できます。
矯正中に虫歯になった場合どうなるのか?
ここからはいよいよ、矯正中に虫歯になった場合どうなるのかについて解説していきます。
といっても、矯正方法によって対応には多少の差が出てきます。
ここでは、以下の2つの場合に分けて解説します。
- ワイヤー矯正中の場合
- マウスピース矯正中の場合
それぞれ見ていきましょう。
ワイヤー矯正中の場合
ワイヤー矯正中に虫歯になった場合、治療を行います。
軽度な虫歯ならばそのまま治療できますが、ワイヤーが邪魔になってうまく治療できない場合も。
その場合は、ワイヤーを一時的に外し、虫歯治療を行ってから再び装着します。
ワイヤー矯正では矯正器具と歯の間に汚れや食べかすがたまりやすく、虫歯のリスクが高まります。
歯磨きも通常よりも難しくなるので、虫歯になることが多いため、しっかりとお口のケアを行うことが重要です。
マウスピース矯正中の場合
マウスピース矯正中に虫歯が見つかっても治療は可能です。
マウスピースは取り外せるため、ワイヤー矯正よりもスムーズに治療できます。
ただし、虫歯治療により噛み合わせが変わることがあるため、再設計が必要となる場合も。
もともとマウスピース矯正は取り外し可能なため、お口のケアもしやすく虫歯になりにくいとされています。
しかし、お口の清掃が不十分だとマウスピースで歯を覆っているため、汚れが唾液で流されにくくなり、お菌の繁殖が起こる可能性もあります。
ワイヤー矯正やマウスピース矯正に関わらず、お口のケアはしっかり行うことが重要です。
関連記事:マウスピース矯正にかかる費用とワイヤー矯正との違い
矯正治療と虫歯には痛みに違いはある?
矯正治療と虫歯の治療には、痛みの種類が異なる特徴があります。
矯正治療では、歯に圧力をかけて位置を変えるため、初めの数日間は軽い痛みや圧迫感を感じることがあります。
これは、歯が動かされることによる生理的な反応であり、痛みは比較的軽度です。
一方、虫歯の治療では、虫歯の進行度合いや治療方法によって痛みが異なります。
初期の虫歯の場合、歯の表面にしみるような感覚が現れることがあるでしょう。
進行した虫歯では、神経が侵されるため、強い痛みを感じることがあります。
また、治療時に麻酔を使用する場合、注射によるわずかな痛みを感じることも。
したがって、矯正治療と虫歯の治療では、痛みの種類に違いがあります。
矯正治療では軽度の痛みや圧迫感がありますが、虫歯の治療では初期の段階では軽度の不快感があり、進行した場合は強い痛みを伴うことがあります。
治療にはそれぞれの状況に応じたアプローチが必要です。
矯正の治療中に虫歯が見つかった場合
矯正治療中に虫歯が見つかった場合、対応方法は以下の通りです。
まず、小さな虫歯でかつすぐに詰められる場合は、矯正器具を一度外して虫歯の治療を行います。
治療後に再び器具を取り付けます。
ただし、矯正専門の歯科医院によっては、虫歯治療に対応していない場合も。
その場合、矯正歯科で器具を外し、一般歯科で虫歯治療を受け、最後に矯正歯科で器具を再び取り付ける流れになります。
矯正治療中に虫歯が見つかった場合、このような流れで適切な治療を受けることが重要です。
関連記事:虫歯を放置するリスクとは?治療期間や費用もチェック
矯正治療中に虫歯にならないための予防方法
ここからは、矯正治療中に虫歯にならないための予防方法を見ていきましょう。
主な方法は以下の3つです。
- 丁寧に歯を磨く
- ワンタフトブラシを使う
- 歯間ブラシを使う
それぞれ解説していきます。
丁寧に歯を磨く
丁寧に歯を磨くことは、矯正治療中に虫歯を予防するための重要な方法です。
矯正器具によって歯と歯の間や隙間ができるため、食べかすや歯垢がたまりやすくなります。
これらの残留物が放置されると、そこに細菌が繁殖し、虫歯や歯周病の原因となります。
歯を磨く際には、矯正器具の周りや歯と歯の間を丁寧に清掃することが重要。
歯ブラシを斜めに傾け、ゆっくりと優しく動かすことで、細菌や汚れを取り除くことができます。
また、フロスや歯間ブラシを使って、矯正器具の隙間に入り込んだ食べかすを取り除くことも大切です。
食事後には必ず歯磨きを行いましょう。
定期的な歯科検診も重要です。
歯科医師の指示に従いながら、虫歯や歯周病の早期発見と治療を行いましょう。
ワンタフトブラシを使う
矯正治療中には、矯正器具の周りや歯と歯の間の隙間に食べかすや歯垢がたまりやすくなるため、通常の歯ブラシだけでは届きにくい部分のケアが必要になります。
そこで効果的な予防方法のひとつが「ワンタフトブラシ」の使用です。
ワンタフトブラシは、通常の歯ブラシよりも小さく、1本の毛束が集まった特殊なブラシです。
狭い隙間に容易に入れるため、矯正器具の間や歯と歯の間の隙間に食べかすや歯垢を効果的に取り除くことができます。
使用方法としては、ワンタフトブラシに適量の歯磨き粉をつけ、矯正器具の周りや隙間を優しく磨きます。
ブラシの先端を使って隙間に入り込みながら、軽い力でゆっくりと磨くことがポイントです。
ただ、確かにワンタフトブラシは使いやすさや効果的なクリーニング力がありますが、使用前に歯科医師や歯科衛生士の指導を受けることをおすすめします。
適切な使い方を知ることで、効果的な予防ケアが行えます。
矯正治療中に虫歯を予防するために、ワンタフトブラシを積極的に取り入れましょう。
歯間ブラシを使う
矯正治療中には「歯間ブラシ」も使用してみましょう。
歯間ブラシは、通常の歯ブラシでは届きにくい狭い隙間や歯と歯の間を掃除するために設計された小さなブラシです。
使い方は簡単で、適切なサイズの歯間ブラシを選び、優しく歯と歯の間を行き来させるだけ。
歯間ブラシを使用することで、食べかすや歯垢を取り除き、細菌の繁殖を防ぐことができます。
とくに矯正器具の隙間は、普段の歯磨きでは十分なケアができないため、歯間ブラシの使用が欠かせません。
また、歯間ブラシは使い捨てタイプや交換可能なタイプがあるため、清潔な状態で使用できます。
ただし、こちらも適切な使い方やサイズの選択には、歯科医師や歯科衛生士のアドバイスを受けることをおすすめします。
関連記事:【習慣・食生活別】虫歯の予防方法
定期的にクリーニングを受ける
虫歯を予防するため、矯正治療中も定期的(月1~2回程度)にクリーングを受けましょう。
セルフケアを丁寧に行っていても、磨き残しは発生します。
放置していると取り除けなかった歯垢が、細菌の温床である歯石に変化します。
歯磨きで歯石を取り除くことはできません。
矯正治療中は、歯の表面に装置を取り付けているため、磨き残しが発生しやすくなります。
定期的にクリーニングを受けて、溜まっている汚れを取り除くことが大切です。
また、クリーニングを受けると、歯磨き指導も受けられます。
磨き残しが発生している箇所などがわかるため、定期的に受けることでセルフケアの質を高められます。
矯正治療中の虫歯を予防するために欠かせない取り組みです。
矯正装置を丁寧に清掃する
矯正装置を清潔に保つことも、虫歯の予防につながります。放置した汚れの影響で、虫歯になることがあるためです。
参考にお手入れのポイントを紹介します。
矯正の方法 | お手入れのポイント |
ワイヤー矯正 | 毎食後に歯磨きを行う。軟らかめの歯ブラシ、タフトブラシなどを使うと汚れを落としやすい |
マウスピース矯正 | ぬるま湯を使って指で優しく擦りながら洗う。週に1~2回程度の頻度で、洗浄剤を使用する。よく乾燥させてから、専用ケースで保管する |
マウスピース矯正も、お手入れを丁寧に行いましょう。
食生活を見直す
食生活を見直すことも、矯正中の虫歯を予防するコツです。参考に、見直しのポイントを紹介します。
【ポイント】
- 砂糖を多く含む食品を控える
- 間食を減らす
- 就寝前の食事を避ける
これらを意識する理由は、虫歯菌が糖分から歯垢のもとになる成分を作り出したり、歯を溶かす酸を作り出したりするためです。
また、矯正装置に絡みつきやすい食べ物や詰まりやすい食べ物にも気をつけましょう。
口の中に汚れが溜まりやすくなります。
心配な場合は、食べる前に細かく刻むとよいでしょう。
食後に歯磨きを行うことも大切です。
矯正前に虫歯治療を受ける場合の注意点
矯正治療前に虫歯治療をする場合、保険範囲内のかぶせものを選ぶことが重要です。
矯正治療では歯を動かしたり歯と歯の間を削ったりする場合もあり、そのために使われる被せ物は一時的なもので、使い捨てになる可能性があります。
高額なかぶせものは自費治療となり、矯正治療との相性が悪いためおすすめできません。
矯正中に虫歯になった場合は矯正器具を一時的に取る場合もある
今回は、矯正中の虫歯治療について解説してきました。
矯正中に虫歯が発生した場合は、矯正器具を一時的に取る必要がある場合もあります。
ただ、マウスピースの場合は取り外せるため、ワイヤー矯正よりもスムーズに治療できます。
また、軽度の虫歯ならばそのまま治療できることも。
歯科医師と相談し、最適な治療法を選びましょう。
世航会デンタルオフィスでは、虫歯治療から予防歯科、歯周病治療まで、幅広い歯科治療を提供しています。受診の際はカウンセリングもしっかりと実施しているため、歯のことでお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。

コラム監修者
資格
- 医療法人社団世航会 理事長・歯学博士
- ICOI 国際インプラント学会 指導医
- UCLAインプラントアソシエーション理事
- JAID 常任理事
- 日本顎咬合学会 認定医
- 日本口腔インプラント学会所属
- 日本補綴歯科学会所属
- 日本歯科医師会 会員
- 東京都歯科医師会 会員
- 厚生労働省認定研修医指導医
略歴
- 1997年 明海大学 歯学部入学
- 2003年 同大学 卒業
- 2003年 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 顎口腔機能再構築学系 摂食機能保存学講座 摂食機能保存学分野 博士課程 入学
- 2006年 顎咬合学会 特別新人賞
- 2007年 同大学院 修了 歯学博士所得
- 2007年 東京医科歯科大学 歯学部附属病院 医員
- 2007年 世田谷デンタルオフィス 開院
- 2008年 医療法人社団世航会 設立
- 2013年 明海大学歯学部 保存治療学分野 非常勤助教
- 2014年 明海大学歯学部 保存治療学分野 客員講師
- 2015年 昭和大学歯学部 歯科矯正学分野 兼任講師
- 2016年 明海大学歯学部 補綴学講座 客員講師
- 2020年 日本大学医学部 大学院医学総合研究科生理系 入学
- 2025年 同大学院 修了 医学博士取得
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